最近のオーストラリアの報道について外務省宛に情報提供のご報告

(English follows)

本日、私たちは外務省に宛ててこちらの文書を送付しました。
私たちは、オーストラリアのこれら一連の事実誤認に基づく報道の背景にあるDV・虐待への無理解と被害者の人権に対する軽視に傷付き、憤りを感じています。
それどころか、文中のYouTube番組に日本の国会議員2名が登場し、本件の事実誤認とその拡散に大きく関わっていることに、驚きと失望を禁じ得ません。

私たちは、日本の法律に誇りを持ち、日本国内だけでなく海外に向けて正確な情報発信を行うことによって、諸外国とより良い友好関係を築くことを目指したいと思います。

以下に同一の内容を記載いたします。どうかご一読ください。

Today, we submitted this report to the Ministry of Foreign Affairs.

We are infuriated by the underlying messages delivered by these medias: the lack of understanding of domestic abuse and how they are paying little attention to the human rights of the domestic abuse victims.

Furthermore, we cannot express how much we are surprised and disappointed that the Japanese two MPs appear in the TV program took an active role in spreading such misinformation.

Safe Parents Japan would like to build a friendly relationships with other countries, including Australia, by spreading accurate information about Japanese law, which we are proud of, in Japan and across the globe.

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外務省ご担当者御中

海外における我が国に関する事実誤認に基づく記述についての情報について、ご提供申し上げます。

【ご報告】

DV・虐待被害当事者団体Safe Parents Japanからご報告申し上げます。

先日、オーストラリアのテレビ番組60 Minutes Australia及び日刊紙The Sydney Morning Heraldで、我が国に関する重大な事実誤認に基づく報道がありました。

以下に、60 Minutes Australia のYouTube番組「The bizarre law that makes kidnapping children legal in Japan」紹介文における事実誤認をご報告申し上げます。「Eighty-two Australian children have been abducted in Japan - and it’s legal」(March 20, 2023)は、今回の60 Minutesの番組内容の作成者と同一人物が書いた記事であるため、重複した内容が掲載されています。なお、今回ご報告する内容は日本の離婚事件を何十年も経験している複数の弁護士に、事実確認の依頼をした上でご報告いたしております。加えて、同番組内では他にも多数の事実誤認が存在していることを、念のため申し添えます。

【事実誤認の内容】

  1. It sounds completely crazy, but in Japan it is actually legal to kidnap children. Yes, legal.

→「日本では、子どもの誘拐が合法である」という事実は存在しません。

 ありもしない事実を海外に向けて垂れ流し、クレイジーと評することは、日本の名誉を著しく損ねるものであり、国益に反する反日的言説であり、看過されるべきではないです。

  1. In that country a bizarre law allows a parent in a failed marriage to literally abduct the kids and run off into the night.

→「日本では、婚姻生活がうまくいかなくなった親が子どもを文字どおり拉致して夜逃げすることが法的に認められている」という事実は存在しません。(DV・虐待からの子連れ避難を想定できておらず、DV・虐待への著しい無理解が推察されます。)

 法制審議会に提出された資料によると、子連れ別居の理由の最も多いのは、子どもを守るためという結果がでています。日本では諸外国と違ってDV被害者は逃げることしかできないのであり、ハラスメントに満ちていた家庭から避難するのが子連れ別居であり何ら非難されるものではありません。

  1.  It’s possible because co-parenting is not an option for disgruntled couples who are divorcing. 

→民法766条を読んでいただきたい。監護については両親が協議して定めることになっているのであり、両親に最低限の信頼関係があれば、いかようにも共同養育を取り決めることは可能な法体系であることを、しっかりと海外にも伝える必要があります。

  1. Sole custody is automatically awarded to the mother or father who was last living with the children. 

→「親権(Parental authority)」と「監護権(custody)」を混同しており、日本の家族法を誤解しています。日本は単独親権(“Sole Parental Authority”)制度ですが、民法766条で離婚後の監護(custody)について協議で決めることを既に定めています。離婚後の共同監護(Shared custody)の度合いは各家庭の個別事情によって異なる点は、オーストラリアと変わりはありません。

 さらに、日本の裁判所における親権者指定の判断基準は「直近で子どもと住んでいた親に自動的に単独親権が認められる」という単一的なものではないため、事実誤認です。連れ去ったもの勝ちになっていると言いたいのでしょうが、実際には、そのような判断をしている裁判は一つもありません。親権者を判断するには、母子手帳をはじめとする客観的資料をもとに、子が生まれる前の同居生活から現在に至るまでにおける監護の様子から、だれが主たる監護者であるのか、子と愛着関係(アタッチメント)を形成しているのは誰かを詳細に検討します。個々の事案に応じた複合的な判断が行われています。

  1. That parent is also given the power to block the other parent’s access. 

→日本には民法第766条で定められた面会交流制度があり、「親権者がもう一方の親のアクセスを妨害する権限を与えられている」という事実は存在しません。むしろ、子どもの福祉を無視した行き過ぎた面会交流の強制が社会問題になっている状態です(参考:Change.org「DV虐待加害者と子どもの面会交流を強制しないでください」)。

 これも、ありもしない架空のことをでっちあげて、日本を貶める言説を流布するという悪質な反日キャンペーンであり、国辱ものです。このような悪質なデマを日本国として許してはいけないです。

  1. While Japan is entitled to make any strange rules it wants, 82 Australian kids have been innocently caught up in this mess.

→「82人のオーストラリアの子ども」の問題を日本の単独親権制度に起因することは不適切です。例えば、この度オーストラリアが支援しているオーストラリア人の父親は、日本で義父母宅に不法侵入して逮捕されている人物です。加害者の問題を日本の法制度の問題にすり替えるミスリーディング、さらには加害者の支援につながる重大な事実誤認です。

【弊害】

本件の弊害として、

①日本の法制度を貶め、一般の人々を日本の法制度には欠陥があるという事実誤認に導く

②事実誤認の内容がDV・虐待被害者の存在や声を無視する一方的なものであるため、結果的に加害者の後押しをすることによって子どもの安全を脅かし、DV・虐待被害者の人権を傷つける

③誤った知識により互いの国に対する印象が悪化し、オーストラリアと日本の良好な関係を損なう

等が挙げられます。

【本件の悪影響と今後】

2023年3月22日(水) 時事ドットコムニュースで、以下のような報道がありました。

「日本に「共同親権」導入促す 子供連れ去り多発で―豪政府」

オーストラリア政府は22日までに、離婚後に父母どちらか一方の単独親権しか認めていない日本の民法の見直しに関し、父母双方が親権を持てるようにする「共同親権」制度の導入を促す意見書を日本法務省に提出した。日豪間で、片方の親が子供を無断で連れ帰る「連れ去り」が多発している現状を踏まえ、親子の面会・交流が容易になるよう法改正を要望した。(以下略)

上記記事はこの度事実誤認をご報告したThe Sydney Morning Heraldを引用しており、本件の問題は当事者のみならず政治、司法にも及んでいます。上記【弊害】でも申し上げましたように、本件事実誤認は子どもの命に関わる重大なもので、看過することは許されません。私共は、日本の法律とその運用の正しい周知を希望すると共に、国際社会に向けて広く訴えてまいりたいと思います。

外務省におかれましては本件及びそれにまつわる諸問題について適切にご対処くださいますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

Safe Parents Japan